小学校でプログラミングが必修になったことは知られてきましたが、「中学校では何をやっているの?」と聞かれると、答えられる保護者は多くありません。中学校のプログラミングは、独立した教科ではなく 「技術・家庭科(技術分野)」 の中で学びます。そして小学校が「コンピューターは手順で動く」という気付きの段階だったのに対し、中学校では一歩進んで、プログラミングを身の回りの問題を解決する道具として使いこなす段階に入ります。この記事では、文部科学省の資料をもとに、中学校で本当に学んでいる中身を図解で解説します。
中学校のプログラミングは「技術・家庭科」の中にある
小学校のプログラミングが算数・理科など複数の教科に散らばっていたのに対し、中学校では学ぶ場所がはっきりしています。「技術・家庭科」の「技術分野」です。
技術分野は、ものづくりや生活の技術を4つの内容で学びます。その4本目が、プログラミングを含む 「D 情報の技術」 です。
この新しい学習内容は、2017年に告示された学習指導要領にもとづき、中学校では 2021年度から全面実施 されています。今の中学生は、全員がこの内容を学んでいることになります。
小学校との一番の違い:「気付き」から「問題解決」へ
中学校のプログラミングを理解するうえで大事なのが、小学校との「ねらいの違い」です。(小学校で学ぶ中身は、別記事「小学校のプログラミング教育、実際に何を学んでいる?」で詳しく解説しています)
小学校では「コンピューターは手順で動く」「自分でも動かせる」という気付きがゴールでした。中学校では、その気付きを土台に、「生活や社会の問題を、プログラミングで解決する」ことに実際に取り組みます。作って終わりではなく、「この問題をどう解決するか」を設計し、プログラムを作り、うまくいかなければ改善する——技術分野ならではの「問題解決」の姿勢が中心になります。
「D 情報の技術」の中身は、大きく次の3つに整理できます(このほかに、学びの締めくくりとして技術と社会の関わりを展望する単元もあります)。
このうち、実際に手を動かしてプログラムを作るのが②と③です。それぞれ見ていきましょう。
実例1:双方向性のあるコンテンツ(ネットワーク)
②は、「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツ」のプログラミングです。少し難しい言葉ですが、分解すると分かりやすくなります。
双方向性とは、「使用者の働きかけ(入力)に対して、コンピューターが応答(出力)を返す」こと。さらに中学校では、その処理の一部に コンピューター同士の情報のやりとり(通信) が含まれるものを扱います。一方通行で見るだけの動画とは違い、ユーザーの操作で反応が変わるのがポイントです。
文部科学省の資料では、こんな題材が例に挙げられています。
- 学校紹介のWebページに、Q&A方式のクイズを追加する
- 教室内で、互いにコメントを送受信できる簡易なチャットを再現し、利便性や安全性を高める機能を加える
- オンライン対戦ゲーム(クライアント・サーバの仕組み)や、WebAPIを使った占いコンテンツの制作
ただ動くものを作るだけでなく、「安全に使えるか」「個人情報は守られるか」といった情報モラルや責任まで一緒に考えるのが、中学校段階の特徴です。
実例2:計測・制御のプログラミング
③は、「計測・制御のプログラミング」。センサーで周りの状態を測り(計測)、その値をもとにプログラムが判断して、機械を動かす(制御)仕組みです。自動ドアや自動運転、工場のロボットなど、社会の自動化を支えている技術そのものです。
代表的な題材が、センサーを使った自動水やりシステムです。土の湿り具合をセンサーで測り、「乾いていたら水を出す/十分なら止める」という条件をプログラムで組みます。植物の世話という身近な課題を、技術で解決する——まさに「問題解決の道具としてのプログラミング」です。
使う言語や教材は?——Scratchなどの「ブロック型」が中心
「中学では何のプログラミング言語を学ぶの?」と気になる保護者の方も多いと思いますが、実は学習指導要領で特定のプログラミング言語が指定されているわけではありません。どんな言語・教材を使うかは、採択された教科書や各学校の選択に委ねられています。
実際の教科書を見ると、命令の書かれたブロックを画面上で組み合わせる「ブロック型プログラミング」が中心です。
- 開隆堂の教科書は「処理の流れを考えやすい、ブロック型のプログラミング言語を中心に解説」する構成で、テキスト型の言語は実習例などでの掲載にとどまります
- 東京書籍の教科書も「JavaScriptはブロック型のプログラミングで簡単にWebページを作成」できる自社教材や、チャットシステムを段階的に作る専用ソフトを用意しています
教育現場の実態も同じ傾向です。NPO法人みんなのコードが全日本中学校技術・家庭科研究会と共同で中学校技術分野の教員1,539名に行った「2022年度 プログラミング教育実態調査」では、②双方向性のあるコンテンツ・③計測・制御のどちらの授業でも、使用しているプログラミング言語(複数回答)はScratchが4割を超えて上位。Scratchを含むブロック型の教材が主流で、JavaScriptやPythonといったテキスト型の言語を授業で使う学校は少数にとどまります。
つまり中学校の段階では、特定の言語を習得することではなく、ブロック型の扱いやすい道具を使って「問題解決の考え方」を身につけることが目的です。エンジニアが実際に使うテキスト型の言語(HTML / CSS / JavaScript や Python)でコードを書く経験は、高校「情報I」や学校外の学びに委ねられているのが現状です。
中学で重視されるのは「設計 → 製作 → 評価・改善」
もう一つ、中学校ならではの特徴があります。それは、いきなり作り始めるのではなく、技術分野の問題解決のプロセスをたどることです。
- 設計: どんな問題を、どんな仕組みで解決するか構想する
- 製作: 設計にもとづいてプログラムを作る
- 評価・改善: 動かして確かめ、うまくいかない点を直す。さらに「この技術は社会にどんな影響があるか」まで考える
つまり中学校では、プログラミングの技能そのものより、「技術を使って問題を解決し、その良し悪しを評価できる力」を育てようとしています。これは、小学校の「プログラミング的思考」をより実践的にした姿だと言えます。
まとめ:中学校は「使いこなす」段階
- 中学校のプログラミングは 「技術・家庭科(技術分野)」の「D 情報の技術」 で学ぶ(2021年度から全面実施)
- ねらいは小学校の「気付き」から進んで、身の回りの問題を解決する道具として使うこと
- 実践は2種類——双方向性のあるコンテンツ(チャット・クイズ・対戦ゲーム)と 計測・制御(自動水やりなど)
- 教材はScratchなどのブロック型が中心。特定言語の習得より「問題解決の考え方」を重視
- 「設計 → 製作 → 評価・改善」のプロセスと、情報モラル・責任もあわせて学ぶ
小学校で「気付き」、中学校で「使いこなし」、そして高校では体系的な必修科目「情報I」へ——学びは確実につながっていきます。中学生の段階で「もっと自分の作りたいものを形にしたい」という気持ちが芽生えたら、それは学校の学びをさらに伸ばす絶好のタイミングです。当教室では、中学生が HTML / CSS / JavaScript で実際に動くWebサイトやWebアプリやゲームをつくるところまでF分類(学校外の学習機会)として伴走します。
出典:文部科学省「中学校技術・家庭科(技術分野)内容『D 情報の技術』」、文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 技術・家庭編」、文部科学省「中学校技術・家庭科(技術分野)内容『D 情報の技術』研修用教材」、開隆堂出版「令和7年度用 中学校教科書(技術分野)」、東京書籍「新しい技術・家庭 技術分野」、みんなのコード・全日本中学校技術・家庭科研究会「2022年度 プログラミング教育・高校『情報Ⅰ』実態調査」(中学校教員の意識調査)
