【開催レポート】台東区内の小学校における放課後子ども教室で、Scratchプログラミング体験会を開きました(全2回)

この記事の中身

2026年8月3日(月)と8月7日(金)の2日間、台東区内の小学校の放課後子ども教室にお招きいただき、Kidsプログラミングラボ 秋葉原教室がScratchのプログラミング体験会を実施しました。2日間で計4コマ、のべ44名の子どもたちが参加。ほとんどの子が「プログラミングは初めて」。それでも終わる頃には、全員の画面で自分のゲームが動いていました。この記事では、当日の流れと、現場で子どもたちがどこでつまずき、どこで目の色が変わったのかを、そのままレポートします。

開催概要

項目

内容

日時

第1回 2026年8月3日(月)/
第2回 2026年8月7日(金)

会場

台東区内の小学校 放課後子ども教室

所要時間

1コマ 60分

参加人数

のべ44名
(第1回:12名 × 2コマ = 24名/
第2回:12名+8名 = 20名)

対象

小学生(低学年〜高学年の混合)

内容

Scratchでゲームを1本つくる
(おばけUFO 👻 / お魚つり 🎣)

費用

無料(当教室の教育貢献活動として実施)

持ち物

なし(パソコンは教室側で用意)

講師・スタッフ

1コマあたり5名
(現役エンジニアの講師1名+講師サポート4名)

放課後子ども教室は、放課後に子どもたちが学校に残って過ごす、台東区の事業です。今回はその活動時間をお借りしました。費用は無料、パソコンもこちらで用意し、先生方のご負担は会場のみ。「地域の子どもたちに、プログラミングに触れる最初の1回を届けたい」という趣旨でお受けいただきました。

学校側の準備は「会場だけ」——持ち込むのは秋葉原教室の"いつものレッスン"

出張の体験会は、やろうと思えば「その日のための出し物」を作ることもできます。私たちはそうしていません。ふだん秋葉原の教室でやっていることを、そのまま学校へ持ち出す。それが今回の設計です。具体的には3つあります。

1. 開校5年目の教室が、そのまま出張する

Kidsプログラミングラボ 秋葉原教室は、開校から5年目の実店舗スクールです。日々の授業で「どこで子どもがつまずくか」「どの説明が伝わらないか」を積み上げてきました。

この記事で挙げた3つのつまずきも、その場で気づいたことではありません。教室で何百回と見てきたから、来る前から想定して準備できる。単発の体験会でいちばん効くのは、この蓄積です。

2. パソコン・教材・電源まで、必要なものは全部持ち込む

学校側にご用意いただいたのは、会場(机・イス)と電源だけです。ネットワーク環境も不要です。それ以外は当教室が持ち込みました。

学校のパソコン教室の空き状況に合わせる必要も、先生方に事前準備をお願いする必要もありません。「場所だけ貸してください」で成立するようにしてあります。

3. 子ども12名に対して、大人5名

今回の体制は、1コマあたり 講師1名+講師サポート4名の計5名。子ども12名に対して大人5名なので、おおよそ子ども2〜3人に大人が1人つく計算です。

これは贅沢をしているのではなく、体験会の質を決める一線だと考えています。プログラミングの体験会は、手が挙がってから先生が来るまでの時間で成否が決まります。3分待たされた子は、その3分で「もういいや」になってしまう。逆にすぐ横に来てもらえた子は、そのままもう一歩先へ進みます。

だから参加希望が多いときは、人数を増やすのではなくコマを分けます。今回も2日間で計4コマに分け、のべ44名のお子さんに参加いただきました。

その日のゴールは「ゲームを1本、完成させること」

体験会でいちばん大事にしているのは、その日のうちに"動くもの"を持ち帰ってもらうことです。説明を聞いて終わり、ではなく、自分の手で作ったゲームが自分の画面で動くところまで行く。だから、その日のゴールは最初にはっきり伝えました。

用意したのは2種類のゲームです。

学年も経験もバラバラなので、難易度を2つ用意し、3年生以上は自分で選んでもらう設計にしています。低学年でもキーボードの上下左右だけで完成まで行けるのが「おばけUFO」、スコアの仕組みまで触りたい子には「お魚つり」。早く終わった子は、そのまま改造やもう一方のゲームに進めます。

冒頭の講師・教室紹介

当日の流れ

進行は4ステップです。

1. プログラミングってなに? Scratchってなに? — 導入。文字を打たなくても、ブロックをつなげるだけでキャラクターが動くこと、そして「まちがえても、なんどでもやり直せる」ことを最初に伝えます

2. れんしゅう — マウス・キーボード・Scratchの画面を実際に触ってみる

3. ゲームを作る — おばけUFO 👻 / お魚つり 🎣 のどちらかを選んで制作

4. 改造アイデア出し・オリジナルづくり — 完成した子から、自分の好きなように作り替える

最後に、できあがったゲームをみんなで遊ぶ「完成ひろう」の時間を取りました。

前方モニターで背景の選び方を全体に説明

「ブロックを1つ置くだけで、魔法が起きる」——最初の3分

導入でいちばん効くのは、言葉の説明ではなく目の前で1回やってみせることです。前方の大型モニターにScratchの画面を映して、講師がブロックを1つずつ置いていきます。

ブロック1つ = 目に見える変化1つ。この対応関係が3分で伝わると、子どもたちは「じゃあ自分のもこうしたい」と勝手に先へ進み始めます。「プログラミング=難しそうな文字を打つもの」というイメージを、最初の数分で上書きしてしまうのがねらいです。

一人ひとりが自立してプログラミングをしてみる

2つのゲームに共通する"魔法の呪文"は「もし〜なら」

見た目のまったく違う2つのゲームですが、実は同じ考え方でできています。

これが条件分岐です。体験会では専門用語を使わず「もし〜なら、〜する」という"魔法の呪文"として渡していますが、中身は小学校のプログラミング教育で扱われる「プログラミング的思考」そのものであり、そのまま高校の「情報Ⅰ」、さらにその先の本物のプログラミング言語まで一直線につながっていく概念です。

関連記事:学校では実際にどんなプログラミング教育が行われているのかは、小学校のプログラミング教育、実際に何を学んでいる?にまとめています。

1回きりの体験会で「1つだけ持って帰ってもらうもの」を選ぶなら、私たちはこの「もし〜なら」を選びます。ゲームは家に持ち帰れませんが、この考え方は持ち帰れるからです。

現場で起きた、3つのつまずき

ここからが、体験会でいちばん価値のある時間です。子どもたちのつまずきは、驚くほどきれいに3パターンに分かれます。私たちは毎回この3つを想定して、あらかじめ対処のカードを用意しておきます。

① 「動かない!」😵

いちばん多い相談です。原因のほとんどは、「はたがクリックされたとき」のブロックが付いていないこと。プログラム自体は正しく組めているのに、それを始める合図がない状態です。

このつまずきは、実は子どもにとって理解の入り口になります。「プログラムは、始まるきっかけがないと動かない」——大人には当たり前でも、これを自分の失敗として発見した子は、二度と忘れません。

② 「当たっても反応しない!」🎯

おばけに当たっているように"見える"のに、何も起きない。原因は「もし〜にふれたら」のブロックが抜けている、あるいは条件の中身が違うケースです。このような複数の子がつまずきやすいポイントにおいては個別対応ではなく、全員でいっしょに1回確認する時間を取りました。

③ 「スコアがふえない!」🔢

お魚つりを選んだ子に多いつまずき。「(スコア)を1ずつ変える」ブロックにたどり着けないパターンです。ここは考えさせるより先にブロックを渡してしまい、動いてから「今なにが起きたか」を一緒に振り返るようにしています。

つまずき以前の壁:キーボードとマウス

もう1つ、低学年に共通してある壁が操作そのものです。当教室の体験レッスンに来られるお子さんのうち、約4割はタイピングが未経験(特に小学校低学年)。今回も、ブロックを置く前の「マウスでドラッグする」「キーの位置を探す」段階に時間がかかる子がいました。

だから体験会では、いきなり制作に入らず「れんしゅう」の時間を独立して1ステップ置いています。ここを飛ばすと、プログラミングでつまずいているのか操作でつまずいているのかが本人にも分からなくなり、「自分には向いていない」という誤った結論に着地してしまいます。この点は1回目の反省をふまえて、2回目に手を入れました(後述)。

関連記事:家庭でのキーボード練習の始め方は 小中学生のためのタッチタイピング入門をどうぞ。

オリジナルゲーム制作中の様子

「できた!」が伝染する時間

最後は完成ひろうです。自分の作ったゲームを、隣の子と遊び合う。ここで起きることは毎回同じで、うまくいった子の画面に人が集まります

「どうやったの?」「それどこのブロック?」と、こちらが何も言わなくても教え合いが始まる。プログラミングの面白さの半分は、この「自分が作ったものを、誰かに見せられる」ところにあります。動くものが手元にあるだけで、子ども同士の会話が勝手に生まれていきます。

2回目でわかったこと——つまずきは同じ、進み方は全員ちがう

8月7日、同じ内容で2回目を実施しました。

まず、3つのつまずきはそのまま再現しました。「はたがクリックされたとき」が付いていない、「もし〜にふれたら」が抜けている、スコアのブロックにたどり着けない。日程が違えば子どもも違うのに、出てくる場所はほとんど同じです。裏を返せば、ここでのつまずきはその子の理解力ではなく、Scratchという道具の構造から来ているということ。だから先回りして準備できるし、つまずいた子に「よくあることだよ」と言ってあげられます。

2回目実施時の様子

2回目に向けて、スライドを1枚足しました

とはいえ、同じ内容をそのまま繰り返したわけではありません。1回目を終えて、資料にスライドを1枚追加しました。それがこれです。

たったこれだけです。プログラミングの話は1文字も入っていません。「マウスでつかんで、動かして、くっつける」という操作だけを独立して見せるスライドです。

1回目で分かったのは、最初のつまずきの多くが「どのブロックを選ぶか」ではなく「ブロックをドラッグできない」だったこと。ドラッグ&ドロップは大人には無意識の操作ですが、パソコンに初めて触る子にとっては、それ自体が新しい技能です。ここを口頭で流していたのを、画面で3ステップに分けて見せる形に変えました。

体験会の改善は、たいていこういう地味なところに宿ります。

隣同士で、違うゲームの違うページを開いている

そしてもう1つ、2日間を通してはっきりしたのが、進み方だけは一人ひとりバラバラだということです。同じ時間に、隣の席では別のことが起きています。一方の画面にはうろこ模様の魚が何匹も泳ぎ、その隣では宇宙を背景におばけが浮かんでいる。テキストの開いているページも、ひとりひとり違います。

体験会は「みんなで同じ画面を作る」時間ではありません。全員が同じスタートを切って、そこからはそれぞれの速度で進む。だから、早く進んだ子を待たせないし、じっくり進む子を急かさない。この「一斉に見えて、実は個別」の状態を保つために、1コマ12名まで・大人5名という体制があります。

頼れるのは先生だけじゃない——テキストが子どもに直接語りかける

この日の子どもたちの手元には、パソコンと一緒にふりがな付きのテキストが開かれていました。ブロックの図が実物大で並び、キャラクターのおばけが「これでかんせいだ! あそんでみよう!」と吹き出しで声をかけてくる。

これは地味ですが、体験会の成否を分ける部分です。分からなくなったとき、手を挙げる以外の逃げ道が手元にあること。先生を呼ぶのが恥ずかしい子、自分で解決したい子、先に進みたい子——どのタイプの子も、テキストがあれば自分のペースで動けます。

テキストを見ながら組み立てる様子

最初の"自分の色"は、背景を変えることから始まる

ゲームが動いたら、テキストは次にこう促します——「クリアしたら、はいけいを かえよう!」

これが改造の第一歩です。背景を変える、おばけを増やす、残り時間を変えて難しさを調整する。どれも1〜2ブロックの操作ですが、ここを通った瞬間に、画面の中身が「先生に言われて作ったもの」から「自分のゲーム」に変わります。手元の「ぼく・わたしのオリジナルゲーム アイデアシート」に、次にやりたいことを書き出していく子もいました。

体験会の本当のゴールは、実はここです。完成させることではなく、完成したあとに"もっとこうしたい"が出てくること

教える側は、生徒と同じ目線で

もうひとつ、写真を見返して気づいたことがあります。サポートに入っているスタッフが、なるべくしゃがんで、子どもと同じ目線でモニターを見ている

小学生にとって、立っている大人は「上から見られている」状態です。座って目線を合わせるだけで、「わからない」と言いやすくなる。プログラミングの指導以前の、こういう部分こそが体験会の質を決めていると思っています。

1回の体験で分かること、分からないこと

正直に書きます。1回の体験会で分かるのは、「この子がプログラミングを面白いと感じるかどうか」だけです。才能も、向き不向きも、ここでは分かりません。

そのうえで、私たちが体験会をやり続けている理由はシンプルです。「面白い」と感じた瞬間があるかどうかが、その後を大きく分けるからです。逆に、最初の出会いが「よく分からないまま終わった」だと、次に触るまでに何年もかかってしまうことがあります。

今回の体験会は、あくまで入口です。その先には長い道のりがあります。Scratchでゲームやアニメーションを自由に作れるようになり、そこからPythonやHTML / CSS / JavaScriptといったテキストベース言語へ——当教室では、この移行に2〜3年かけてじっくり取り組みます。数ヶ月で飛び越えられるものではありませんし、飛び越えさせるべきものでもないと考えています。

関連記事:Scratchから本物のコードまでの全体像は 小中学生プログラミング 0→100完全ロードマップ、始める年齢の目安は 小学生にプログラミングを習わせるベストな年齢は?にまとめています。

学校・学童・放課後子ども教室のご担当者さまへ

当教室では、地域の子どもたちへの教育貢献として、出張プログラミング体験を無料でお受けしています。営利目的の勧誘を行うものではありません。

今回のような公立小学校・区の施設での体験会は、地域の子どもたちへの教育貢献として無料でお受けしています。当日にご家庭への勧誘を行うことはありません。ただ、私たちも小さな教室ですので、無料でお受けできる回数には限りがあります(年間で数回程度)。ご相談は早めにいただけると助かります。

民間学童・私立小学校・企業のご依頼は、有料のプログラムとしてご案内しています。体験の中身は今回と同じですが、教材・機材・当日の運営体制まで含めてお引き受けする形です。費用は内容と人数に応じてお見積もりしますので、まずはご相談ください。

ご相談は 教室のお問い合わせフォームまたはお電話(050-5896-5539/担当:中川)よりお気軽にどうぞ。

2日間にわたって受け入れてくださった放課後子ども教室のみなさま、当日ご協力いただいた先生方、そして参加してくれた子どもたちに、あらためて御礼申し上げます。ありがとうございました。

今日からの一歩


この記事を書いた教室について

Kidsプログラミングラボ 秋葉原教室 — Scratchの「楽しい」で終わらせず、Python や HTML / CSS / JavaScript という"実用的なプログラミング言語"まで進ませたい小・中・高生の家庭に、つまずきポイントと伸び方の地図を渡す、秋葉原の実店舗スクールです。

体験レッスンでは、お子さんが実際にコードを書いて画面が変わる瞬間まで体験できます。お子さんとの相性をその場で確かめてください。

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