
家庭でできる「アンプラグド」プログラミング的思考あそび
「プログラミングに興味はあるけど、まだ年長だし、パソコンを買うのも早い気がして……。何か家でできることってありますか?」
あります。しかも、道具は紙と鉛筆、あるいは家にあるもので十分です。「アンプラグド」——電源につながない、つまりパソコンを使わずにプログラミングの考え方を学ぶ方法は、小学校のプログラミング教育でも採用されている、れっきとした学習アプローチです。この記事では、未就学〜小学校低学年のお子さんと今日からできる遊びを5つ、進め方つきでご紹介します。

アンプラグドとは——プログラミング「的思考」はPCがなくても育つ
まず前提を整理します。小学校で必修化された「プログラミング教育」の中心は、コードを書く技術ではなくプログラミング的思考——やりたいことを実現するために、手順を分解し、順番に並べ、うまくいかなければ直す考え方です。
この考え方の土台は、画面の中でなくても育てられます。むしろ幼児〜低学年のうちは、体を動かし、手でモノを触りながらのほうが入りやすい。それがアンプラグド(unplugged=電源につながない)という方法です。
プログラミングの核になる考え方は、実は3つしかありません。
順次(じゅんじ): 決めた順番どおりに実行する
反復(はんぷく): 同じことをくり返す
分岐(ぶんき): 「もし〜なら」で行動を変える
これから紹介する5つの遊びは、すべてこの3つのどれかを体で体験するものです。
遊び1: ロボットごっこ——手順の言語化ゲーム【順次】

親がロボット役、子どもがプログラマー役になります。ルールはひとつ、ロボットは言われたことしかできない。
「冷蔵庫から麦茶を出して」と言われたら、ロボットは動きません。「冷蔵庫のドアを開けて」「右手で麦茶を取って」「ドアを閉めて」……と、動作を分解して命令する必要があります。
親はここでわざと意地悪に、命令を文字どおりに実行するのがコツです。「歩いて」と言われたら壁にぶつかるまで歩く。子どもは笑いながら「止まって!」と叫び、「あ、『3歩あるいて』って言えばいいのか」と気づく。この「伝わらない→分解して言い直す」の往復が、プログラミングの一番の基礎練習になります。
遊び2: 料理の手順書づくり【順次・反復】

いつもの料理を、お子さんと一緒に「手順書」にしてみます。題材はおにぎり、ホットケーキ、サンドイッチなど工程が5〜10個のものがちょうどいいです。
作る前に、手順を紙に書き出す(絵でもOK)
書いた手順書「だけ」を見ながら、実際に作ってみる
「あれ、ごはんを冷ます、が抜けてた」と気づいたら、手順書を直す
ポイントは3番です。作って終わりではなく、抜けに気づいて手順書を直す——これはプログラミングでいうデバッグ(間違い探しと修正)そのものです。「3回まぜる」「きつね色になるまで焼く」といった表現が出てきたら、それは反復と条件の芽です。
遊び3: 宝探しの指示書【順次・分岐】
家の中のどこかにお菓子やおもちゃを隠し、そこへたどり着く「指示書」を書いて渡します。
低学年向け: 「ろうかをまっすぐ → つきあたりを右 → 3ばんめの引き出し」
慣れてきたら分岐を入れる: 「もしドアが閉まっていたら、開けてから入る」「もし箱が空だったら、ソファの下を見る」
慣れたら役割を交代して、子どもが指示書を書く側に回ってください。書く側になったとたん、「どう書けば迷わず伝わるか」を考え始めます。これは遊び1の言語化の、紙の上での応用編です。
遊び4: 「もし〜なら」おうちルールカード【分岐】

紙のカードに「もし◯◯なら → △△する」を書いて遊びます。
最初は体を使ったゲームがおすすめです。「もし赤いカードが出たら→しゃがむ」「もし青いカードが出たら→ジャンプ」と決めて、親がカードを出し、子どもが反応する。信号ゲームの要領です。
慣れてきたら、日常に持ち込みます。「もし雨なら→長ぐつ、もし晴れなら→スニーカー」「もし宿題が終わっていたら→ゲーム30分」。条件と結果をセットで言葉にする習慣は、そのままプログラミングの条件分岐の読み書きにつながります。
遊び5: カード・ボードゲームで「先読み」【総合】
市販のゲームにも、プログラミング的思考と相性のよいものがあります。すごろく系で「3マス進む・1回休み」の指示を読む、迷路の道順を先に指でなぞってから進む、オセロや将棋くずしで「こうしたら、ああなる」を考える——どれも手順の先読みと、結果からの修正の練習です。
専用の知育ゲームを買い足す必要はありません。まずは家にあるゲームで、「次どうなると思う?」の一言を足すだけで十分です。
遊びを学びに変える、親のひとこと
5つの遊びに共通する、効果を左右するポイントをまとめます。
場面 | 言いたくなる言葉 | 代わりに |
|---|---|---|
手順が抜けている | 「ここ抜けてるよ」 | 「このとおりにやってみるね」(やって見せて気づかせる) |
失敗した | 「ちがうでしょ」 | 「どこを直せば動くかな?」 |
うまくいった | 「すごいね」 | 「どうやったの?」(手順を説明させる) |
間違いを指摘するのではなく、間違いが「見える」ようにして、自分で直させる。アンプラグドの遊びが優れているのは、失敗が責められるものではなく、笑える出来事として現れることです。
現場から

教室では、体験レッスンに来るお子さんのうち約4割がタイピング未経験です(小学校低学年に特に多い)。つまり、低学年の入り口では「パソコン操作の壁」が学びの壁になりやすいということです。アンプラグドの遊びはこの壁を最初から取り除いて、考え方だけを先に育てられます。ロボットごっこで「分解して伝える」経験のある子は、Scratchでブロックを並べ始めたとき、その意味をすっと理解します。
一方で、正直にお伝えしたいこともあります。アンプラグドは入り口としては優れていますが、それだけで完結はしません。「命令どおりに動く相手」に本当に出会うのは、やはりコンピュータの前です。手順どおりに動いた、動かなかった、直したら動いた——この手応えの鮮やかさは、画面の中でこそ得られます。アンプラグドで土台を作り、興味が続くようなら画面の中へ。その全体の流れは Scratch→テキスト言語 完全ロードマップ に、始めどきの考え方は プログラミングは何歳から? にまとめています。
パソコンを使う段階に進んだら、保護者がプログラミング未経験でもできる関わり方を 家庭サポートの記事 に書いています。あわせてどうぞ。
今日からの一歩
今日の夕方、ロボットごっこを5分だけやってみる。「お風呂の準備をして」を命令に分解できるか。道具ゼロで今日から始められます
週末の料理をひとつ、手順書つきで作ってみる。書く→作る→直す、まで通すとデバッグの体験になります
「もし〜なら」を1日1回、会話に入れてみる。「もし雨だったら、どうする?」——条件を言葉にする習慣が、そのまま思考の土台になります
この記事を書いた教室について
Kidsプログラミングラボ 秋葉原教室 — Scratchの「楽しい」で終わらせず、Python や HTML / CSS / JavaScript という“本物の言語”まで進ませたい小中高生の家庭に、つまずきポイントと伸び方の地図を渡す、秋葉原の実店舗スクールです。
アンプラグドの遊びで「手順を考えるのが好きかも」という様子が見えたら、次の一歩に体験レッスンをどうぞ。お子さんが実際に画面の中で命令を組んで、キャラクターが動く瞬間まで体験できます。お子さんとの相性をその場で確かめてください。
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